◇新潟日報「幸せフィナーレへ」(41)=11月13日付=

早朝の北海道。小雨降る中、病院から母を乗せた車がわが家へ帰っていく。その光景は今でも忘れることができません。今や日本人の8割が最期を医療機関で迎える時代。もしかしたら、自宅で家族の中で最期を迎えたかったのではないか―。そういう思いが私の中にあります。

セミナーでは、「自宅で家族や知人、お世話になった人に囲まれて最期を迎えたい」というご希望が多くあります。医療機関で最期を迎えたい場合でも、どのような医療サポートを望むのかということを、医療スタッフと相談できる体制が整いつつあるようです。

私の母の場合、余命宣告を本人にしませんでした。医療スタッフと私たち家族は、母の最期に向けての医療方針について「お母さんならどうしたいと思いますか?」「母ならきっとこう望むと思います」ということを話し合いました。

ですが、母は自分の余命を感じていたと思います。年老いた実母を病院に招き、「自分が先に旅たつことは親不孝だが、変えることのできない仕方のないことなんだ」と、別れを伝えていました。「終活」という考え方が広まっていなかった時代の、母なりの「自分で決めていく最期」の覚悟を私は見た気がします。

一般社団法人「はまなす」(新潟市中央区)代表理事・秋山 貴子